1.中学校保健体育での武道・ダンス必修化
流行の音楽に乗せて身体を動かしポーズを決めて踊るダンスは、上手にできれば格好良く楽しいものです。
そんなダンスを基礎から学べるダンススクールでは、ここ数年で大きな変化が起きています。
従来のダンススクールでは、一部の大会に参加したりプロを目指す方を除き、個人の趣味のためにレッスンを受けるケースが圧倒的大多数でした。
ここでやって来た第一の波が、2008年に文部科学省により告示された新学習指導要領による中学校保健体育での武道・ダンス必修化です。
武道では主に柔道を行い、日本古来の武道と言う文化に触れながら基本となる動作を身に付けて相手を攻撃したり相手の技を防御することで勝敗を競う楽しさを学びます。
一方のダンスは創作ダンス、フォークダンス、現代的なリズムのダンスで構成され、イメージを身体で表現したりダンスを通じた交流によって仲間とのコミュニケーションを図りながら自己を表現する楽しさや喜びを味わう運動であるとされています。
この中にある「現代的なリズムのダンス」とは主にヒップホップダンスを指し、生徒たちの興味を惹きながら楽しい授業を行うことを目指しています。
カリキュラムの中で実施されるのは、創作ダンスではテーマと振り付けを考えてダンスによって表現をします。
生徒個人で行うほかにもクラスでグループを組んで行う際には、相談しながら作り上げていくのでディスカッション能力や協調性も学ぶことができます。
フォークダンスではクラシカルなダンスの音楽に乗せて輪になって踊り、順番にパートナーを入れ替えながらクラス全体の連帯を深めていきます。
これらの2つについてはダンス必修化になる前にも一部で選択制で実施されていた授業でしたが、必修化により必ず行うカリキュラムとして決定されました。
2.ダンススクールでは教職員向けのコースの開設などが増えた
つづくヒップホップダンスは必修化により新たに加わったカテゴリーで、保健体育の授業に大きな変化をもたらしました。
まずは基礎的な動作を身につけ、リズムに乗って身体を動かしたりスタンダードなステップを踏めることを目指します。
つづいてそれらをマスターすれば今度は音楽に合わせてダンスを踊り、その中には課題となる高度な腕の動きやステップなどを取り入れひとつのダンスを完成させていきます。
これらを行うためには、まずはヒップホップダンスを教える教職員がマスターしなければならずダンススクールでは教職員向けのコースの開設や研修の請け負いなどを行うケースが相次ぎました。
参考サイト:大人初心者のための東京のダンススクールカーネリアン
また、生徒向けには主要5科目の学習を強化するのと同じように、保健体育のダンスを身につけるための塾としてのコースも開設され通う生徒さんも増えました。
この背景には内申点を重要視するという方針が示されたことも大きく、それまでは受験に挑むにあたり主要5科目が重視されていましたが、それでは偏りがあるとされ全ての教科の内申点も評価されるようになったため、これまで疎かにしてしまいがちだった保健体育でもしっかりとした成績と内申点を上げる必要があることから子供をダンススクールへ通わせる親御さんも急増しました。
これらの取り組みに加えて間もなくプログラミングの必修化も控えており、主要5科目ができればそれで良いという時代は終りを告げ、幅広い分野に興味を持ち自身で考え創作したり、周囲の人々との協調性を持ち共に何かを作り上げるという能力が求められるようになりました。
3.職業としてのダンスが認知される大きな後押しになったきっかけ
つづいての波が、職業としてのダンサーの認知度やチャンスの広がりにあります。
かつての職業のダンサーと言えばどちらかと言えば芸能のカテゴリーに入り、ごく限られた人にしかチャンスの与えられない世界でしたが、昨今ではひとつの職業と認知されつつあるだけではなく保健体育の教師になる場合には必須の項目となりました。
職業のダンスが認知される大きな後押しとなったのが、ダンスをスポーツとして取り扱い将来的にはオリンピックの競技とすることを目指している世界的な団体の登場です。
これにより、学生時代にスポーツをしていた生徒が将来的にプロ選手を目指すのと同じように、ダンスを習っていた生徒がプロを目指せるルートが確立されつつあります。
ダンスに必要な動作を習得できるのはもちろんのこと、在学中にはオーディションが実施されその才能が認められるとスカウトされてプロの事務所と契約するなどして夢を叶えます。
ダンススクールはかつての個人の趣味の習い事として通う教室というものから教職員の研修、塾、そしてプロを目指す方のための登竜門とさまざまな機能が求められるようになりました。
多岐にわたる要素を含んでいることから学校の授業では文部科学省、職業のダンサーを目指す場合には労働となることから厚生労働省、スポーツ競技の場合にはスポーツ庁の管轄となり、これらの3つの省庁から認可を受けたダンススクールも登場しています。
このようにダンスは大きな広がりを持ち、多くの人々にとってより身近な存在となりました。